森原 規行 (MORIHARA Noriyuki)
デザイン学部 ビジュアルデザイン学科 デジタルクリエイションコース

検索すればなんでも出てくるこの時代に、“本当に伝えるべき情報”とは何か
コミュニケーションデザインを専門とする森原先生。コミュニケーションを大切にしたコンテンツの企画とデザインを行い、伝えるべき情報を精査し、整え、その周辺の情報も付随して円滑に伝える、コミュニケーションのデザインを手がけている。
主に幼い子どもたちを対象にワークショップや授業を行なっている先生。検索すればなんでも出てくるようになった昨今の情報社会の中で、フィルターのかかった情報ではなく「自分の考え」を持って欲しい、と先生は語る。一方で、学生や大人はすでに一定の知識を持っている。だからこそ、検索しても出てこないような実体験や背景をデザインによって提示することで、新たな視点や考えるためのきっかけを与えることを大切にしているのだそうだ。
小学校との取り組み
2019年頃から始まった山科区にある安朱小学校との取り組みでは、様々な美術教育を行ってきた。例えば、SDGsに関連した授業では、17つの持続可能な社会にするための項目をそれぞれコラージュ作品にした。生徒たちはSDGsの項目全てを暗記しているが、それはあくまでスローガンとして覚えているだけのもの。そうではなく、持続可能な社会を実際に自分たちで感じ取り、考えるために、街を歩き17色を街から見つけて写真を撮った。それらを集め、切り出し、コラージュしてSDGsのロゴマークを制作。友人や親御さんとのコミュニケーションも生まれ、有意義な取り組みとなった。



また、安朱の地域の方たちが作成した、観光ルートを案内するため、子どもたちが案内看板をデザイン。制作にあたり、様々な問いを子どもたちに投げかけ、世界中の事例をスライドを用いて説明したという。ただ、この道を利用して欲しい、というだけではなく、その道を使いたくなるような工夫が必要だと伝えると、生徒たちは自由な発想でわかりやすく、かつ見ていてワクワクするような看板を提案。地元の人にも協力してもらい、子どもたち自身が地域の一員であるという実感を得るきっかけとなった
子どもたちに持ち続けて欲しい、純粋な視点
これからどんどん成長し、出来上がっていく子どもたち。情報が溢れかえるこの世の中で、それらに流されず、自分たちが面白い、と思うものを他者と共感するため、自分の言葉で伝える力をつけて欲しいと、森原先生は願う。デザインの力で共感を生み出し、一緒に考えることができるように、アートで自身の視点を持つ練習をし、遊びの中に学びを見出していく。
世の中のデザインは、ユーザーに利益やメリットがあることを考えて作られることが多い。それは決して間違ったことではないが、自分の好きなことや視点をデザインを通じて誰かに共有し、何かを生み出していくのも楽しいのではないか、と先生は微笑む。情報に左右されず、常識という概念を壊し再構築することで、新たな概念が見えてくるのだ。
