並河 龍児(NAMIKAWA Ryuji)
インターンシップ(大学斡旋型)では、大正14年創業の老舗手づくり京とうふ「並河商店」と連携し、店主の並河龍児さんが立ち上げた地域団体「地元の愉快な仲間達」の活動に参加して、ロゴやイメージキャラクターの作成、スタンプラリーの企画開催などに取り組みました。
今回は、学生を巻き込んだ地域活動の在り方と、その取組の魅力についてお伺いしました。
人の繋がりが見える関係構築を目指して
大正14年の創業以来、東本願寺さんのすぐ近く、東洞院通で代々豆腐店を営んでいます。ちょうど3年前、新型コロナウイルスが流行し、地域の賑わいもなくなって気持ち的につらい時期が続きました。一人で悩んだり落ち込んだりしても仕方がない…、こんな時だから何か面白いことをしよう!と、仲間である個人商店主のみんなに声をかけ、5人で立ち上げたのが「地元の愉快な仲間達」という団体です。
最初は、第一日曜日の朝に近隣を清掃して回ることから始めたのですが、やがて僕たちの活動に賛同してくれるボランティアの人たちが増え、せっかくだから皆さんに楽しんでもらおうと、団体メンバーの店舗の一部を開放してご朱印帳を販売したり、ワンコインでマッサージサービスを提供したり、手づくりマルシェや夏祭りを定期的に開催するようになりました。
僕たちが子どもだった時代、どこの地域にも「寄り道せんと早よ帰りや」と声をかけてくれるおじさん、おばさんがいましたね。僕たちの団体がそんなおじさん、おばさんの代わりになれないかと考え、小学生が学校から帰る時間に合わせて、週に一度の見守り活動にも取り組んでいます。最近では、近くに事業所を持つ大企業が僕たちの活動に関心を持ってくれ、社員の皆さんと一緒に清掃や見守りを行うようになりました。個人商店主の集まりから始まった小さな活動の波が、今ではいろんな人たちのご縁と繋がり、大きなうねりとなって地域全体を動かし始めています。
デザイン×表現力を活かした地域協働
今回、京都精華大学の学生さんには、団体のロゴやキャラクター、パンフレットなどを作ってもらいました。ライン電話などでミーティングを重ねていく中で、「地元の愉快な仲間達」を短くした「ジモゆか」っていうネーミングってカッコ良いねとか、僕たちには思いもつかないような斬新なアイデアがぽんぽんと出てきて、なるほどと感心させられることも多かったですね。
団体キャラクターのジモちゃんとゆかちゃんは、繋がり、結びを連想させる「綱」や障がい者支援を象徴する「イエローリボン」をイメージして作ったもの。また、ロゴは団体が大切にする「縁」という言葉を円のかたちで表現してもらいました。いずれも京都精華大学の学生さんならではデザイン力が活かされ、色みも温かく、僕たちの活動理念や思いにピッタリなものが出来上がりました。
2023年9月の第一日曜日、学生さんに協力してもらって、東洞院通に暖簾を構える表具店や扇子店、クラフトビール店などを巡り歩くスタンプラリーを開催しました。スタッフお揃いのティーシャツを作るなど、学生さん一人ひとりがいろんなアイデアを出してくれましたね。ジモちゃん、ゆかちゃんのキャラクターを、大阪の障がい者施設で缶バッジに加工してもらい、ラリーを完走した人たちにプレゼントしたのですが、地域外から多くの参加者が集まってくれ、たいへん好評なイベントとなりました。普段なかなか足を運ぶ機会のない店舗で買い物をしたり店主と会話をしたりすることで、新たな地域の魅力発見につながったのではないかと思います。
学生がまちづくりに関わる仕掛けづくり
例えば、扇子や表具、僕が営む豆腐って、今は伝統の何々という言葉で一括りにされていますが、当時は最先端のアート、芸術作品だったのだと思います。時代の変化に合わせて対応してきたからこそ、現代まで連綿とお客様から支持され続けているのではないでしょうか。今回のプログラムでの取組を通して、学生さんが地域のモノ、コトに目を向けるきっかけになってくれればと考えています。サークルのような感覚で、僕たちの団体の活動に定期的に関わってもらえたら嬉しいですね。
東洞院の限られた地域だけではなく、下京区、もっと視野を広げて京都市全体を僕たちの「地元」ととらえ、愉快な仲間達の輪をどんどん広げて、みんなが元気になる活動、笑顔になる取組を発信していきたいと思っています。