SOCIAL PRACTICAL SKILL DEVELOPMENT PROGRAM

建築家という生き方

葉山 勉(HAYAMA Tsutomu)

デザイン学部 建築学科 建築コース

葉山 勉(HAYAMA Tsutomu)

「ほんもの」に触れる大切さ

建築家として数多くの作品を手掛けている葉山勉先生。その多くは学生との共同作品で、社会に関わる一つのきっかけとして、積極的に連携授業を行う傍ら、制作をすることの「楽しさ」を教えている。今年行った代表的な取り組みとして、未利用木材を有効活用したベンチのデザインと制作、オーストラリアのブリスベンに建つモデル住宅の設計、伝統建築の寺社の設計監理など、活動内容は多岐にわたる。

その取り組みに対する理念は、今まで見向きもされてこなかった素材の価値に注目し、私たちの暮らしの中で活用していくという点にあるだろう。「周りがプラスチックで溢れているからこそ、自然の木や石に触れてほしいんです。ほんものの魅力、素晴らしさを感じ取る感性を養うことが大切だと思っています」。例えば、住宅や商業施設などの内外装の多くは、木などを模したフェイクシートが使われていることが多い。「素材が持っている本当の香りやテクスチャーなどをワークショップなどで学生を通じて、子どもたち、そしてその親の世代の皆さんに知ってもらいたい」と、葉山先生は微笑む。

滋賀県安曇川流域の未活用木材
滋賀県安曇川流域の未活用木材

「遊び心」から生まれる、年齢を超えたたくさんのアイデア

葉山先生に舞い込む社会連携の依頼は多い。学生と対等の目線で取り組むのが葉山スタイルだ。積極的に社会と連携していくことで、学生はその経験を就職活動に活かしたり、いち早く社会経験を積むことで社会のニーズを知り、自身のスキルの活用方法を見つけることができる。自分の専門的な力を学内のみでなく、学外から評価してもらうことが大切なのだという。「楽しくないと意味がないですからね。遊びながら、自由に発想する力を鍛えて欲しいと思います」。

「子どもは宝物」だと葉山先生。「子どもの頃に独創性や感覚を身につけておかないと、大きくなってから感性に乏しく、思いやりのない子に育ちかねない」。ワークショップを通して、自分自身の手を動かして制作し、みんなで譲り合ったり分担したりして作品を完成させる…これらのクリエイティブな活動を小さな頃から経験し、感性を磨くことはとても大切なのだという。

「芸術に正解はないので、組み合わせ次第でいろいろなものができるっていうのを友達と見比べて実感してほしいですね。普通の勉強じゃない勉強の場を提供してあげたい」と笑みをこぼす。

フィンランドから見える建築学の大切さ

葉山先生はフィンランドのプロジェクトも担当している。フィンランドは建築教育が盛んで、幼稚園から高校まで建築を学ぶ授業があるという。日本ではあまり馴染みはないが、建築を学ぶことが北欧では教養の一つ。誰でも見て、触れることができる建築物を公共の財産とし、市民一人ひとりで守り、次代に承継していくという方針のもと、小さい頃から建築に関する教育を受けるのだそうだ。

 そんなフィンランドの教育現場を見て、葉山先生は「工業化社会になってから工場でモノを作って、それを買う時代になったけれど、これからは原点に戻り、自給自足の社会になる気がしています」と語る。

「建築家」は、社会環境全てを提案する「生き方」。100年、200年先の未来の環境まで見据えて、学生たちと一緒に何ができるかを考えているのだそうだ。「建築」という言葉の意味は「構想する」という概念。職業として、建物という「モノ」を設計する建築士ではなく、その建築計画は社会にとって、本当に実行する必要があるのか、を常に問う建築家としての考え方を葉山先生は学生たちに教えている。

「今後はもっと他の学部や、さらには他大学の学生たちとも、いろいろなことをやっていきたいですね」と葉山先生。次はどんな面白いことをしようかと、先生は楽しそうに語る。

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