内容
クリエーターで映像作家の稲葉まりが制作する、NHK Eテレ「シャキーン!」の「まつりばなし」は、彼女が馬喰町バンドと一緒に日本各地の祭りを取材し、切り絵アニメーションと音楽でそれを表現するコーナーだが、徳島県の阿波木偶箱廻し(あわでこはこまわし)という伝統ある人形芝居を題材にした作品が放映されている(2018年12月現在)。阿波木偶箱廻しは、人形遣いが正月には家々に福を運び、普段は各地に芸を運んだ、江戸時代以来、徳島県で盛んだった伝統芸能だ。稲葉の作品に思うのは、現代的に蘇った伝統的なものは、単なる温故知新ではなく、前衛的だということだ。
この授業は、民俗学・文化人類学が専門の教員と一緒に地方の現場に出向いて、当地の人々が長い年月をかけて育んできた文化に寄り添いながら、それを支えた生活の来歴を理解しようとするものだ。そこでは、一地方の狭い地域に存在する些細でミクロな事柄と具体的に向き合うことを通じて、一見それとは無関係に思える国内外の動向や現代のさまざまな問題に気づくというフィールドワークの醍醐味が経験できる。そのためには、現場を歩き、目を凝らし、耳を澄ませ、自分の感性と頭で思考することが大切である。
今回のフィールドは、四国は瀬戸内海の鳴門海峡に面し、吉野川と剣山という雄大な自然を有する徳島県である。今や日本中に広がっている阿波踊りの本場で、近年は地方発のアニメイベント「マチ★アソビ」が人気の徳島市で実施する。江戸時代以来、当地域が独自に発展させてきた阿波人形の伝統と、いま天然染料の良さが再評価されつつある藍の文化、そして徳島の農業について体験的に学ぶ。
徳島、四国、人形芝居、芸能、藍、農業などに興味がある人、フィールドワーク、歴史文化、地域社会に関する問題意識を持ち、その可能性について考えたい人の参加を期待したい。