松村 慎(MATSUMURA Shin)
メディア表現学部 メディア表現学科 メディア情報専攻
自らの手を動かし、ものづくりする意味を考える
京都精華大学で教壇に立つ傍ら、ウェブやモバイルのコンテンツ開発会社を経営する松村慎先生。「メディア表現学部で学ぶ意義は何でしょうか?」と問いかける。
代表的なメディアの一つ、ゲームアプリを制作するとき、一般的な芸術系大学では、ゲームの企画を作ったりキャラクターの絵を描いたりすることは学ぶが、実際にプログラムを組んで、キャラクターを動かすのは専門のエンジニアが担当することがほとんどだ。「しかし…」と松村先生は言葉を続ける。「世の中のものすべてがデジタル化されている現代において、アート力だけでなく、プログラミングなどより実践的なスキルを身につける必要があります」。実際に、松村先生のこれまでの経験から、面白い作品はその両方の視点と技術を持っているクリエーターから生まれることが多いという。
例えば今、京都精華大学ではたくさんの留学生が学んでいるが、彼らが悩んでいること、困っていることは何だろうか? 日本語が上手に話せなくてコミュニケーションがうまくいかないのなら、スマホをかざせば、画面上に愛らしいアイコンが現れて会話を翻訳してくれるようなアプリケーションが提供できるかもしれない。今、社会から求めている実践力-、すなわち身の回りにある課題にアンテナを張り巡らし、それを抽出し、解決に導くために、「自らの手を動かしてものづくりをすることが大切」とメッセージを発信する。
普段の学びでは気づかない新たな価値観の芽生えにつなげる
社会実践力育成プログラムでは、オンライン型のインターンシップと海外ショートプログラムを担当している。若い頃、ウェブ技術をカナダのバンクーバーで学び、中国の天津にも留学経験があるという松村先生。「外国のエンジニアとコミュニケーションする機会を提供することで、グローバルな時代に自分たちに何ができるかを考えてもらいたいですね」とその目的を説明する。
2Q集中で開講された「インド人のエンジニアに向けてオンラインで日本語を教える」プログラムでは、将来、日本で働きたいと希望するインドのエンジニアとオンライン上でつながり、例えば仕事で使うビジネス用語やレストラン等に行ったときに役立つ日本語表現を資料としてまとめた。インド人とは英語で会話するため、コミュニケーションは容易ではないが、異なる文化や考えに触れることで、普段の学びだけでは気づかない新たな価値観の芽生えにつながっていくことも少なくない。
4Qで開催する海外ショートプログラムでは、およそ10日間の予定で実際にインドを訪れ、古代遺跡等を巡るほか、優秀なプログラマーたちを交えてワークショップを開催するという。もしかすると、インドに行きたい、あるいはインドで仕事をしたいという若い世代は少ないかもしれない。しかし、「プログラミングは世界共通語。ボーダレスな世界で、未来の可能性を広げてもらいたい」と笑みをこぼす。
社会との関わりを意識し実践力を磨いて自己の可能性を広げる
株式会社クスールの代表として、企業向けや子ども向けの研修・教育事業を手がけている松村先生。第一線で活躍するエンジニアを講師に迎え、生徒一人ひとりが手を動かし、オリジナルの作品を作ることでスキルが身につくように心がけているという。
大学を卒業して社会に出れば、自ら考え、あれこれと試行錯誤しながら、価値を創出していくことが求められる。「アーティストを育成するのではなく、社会とのつながりを意識し、今まで出会ったことのないようなものや人との関わりの中で、自分の可能性を広げるきっかけを得る…。それが社会実践力育成プログラムの魅力だと思います」と言葉を締めくくる。