SOCIAL PRACTICAL SKILL DEVELOPMENT PROGRAM

アニメのようなわくわく感を社会教育で実践

数井 浩子(KAZUI Hiroko)

マンガ学部 准教授

二次元の想像の世界に息を吹き込む魔法のクリエイター

「らんま1/2」「忍たま乱太郎」「ふしぎ星の☆ふたご姫」「3月のライオン」…。数井浩子先生は、誰もがテレビや映画で一度は見聞きしたことがある名作アニメーションの制作を数多く手がけてきた。「オールラウンドに仕事をこなす中でも、演出をしたりキャラクターデザインを作り上げたり、アニメーションの設計図に関わる作業は楽しいし、やりがいがありますね」。

例えば、主人公が横を向いたとき、髪の毛はどんな形になるのか、着ている服はどういうシルエットになるのか、背景はどんなふうに動くのか…。アニメでは原作マンガのコマ割りでは描かれないような、登場人物の細かな動きや表情、仕草を表現することが求められるという。「むしろ表から見えなかったり、どうでもいいと思うような部分をきちんと描いてあげることが大切」。数井先生が原画を担当した劇場版アニメーション「この世界の片隅に」の食事シーンでは、主人公の女の子が右手に持ったお茶碗をわざわざ左手に持ち替えてお箸を手にするという、当たり前のように繰り返される日常風景を描くことで、そんな私たちの暮らしを一瞬にして破壊してしまう戦争の恐ろしさを際立たせてみせた。

「アニメの世界はシンフォニーと同じ」。第一楽章、第二楽章…と続き、クライマックスまでの時間軸の起伏のラインをどのように表現していくかを考えるのが、演出の面白さだという。最近では、「犬王」や「四畳半タイムマシンブルース」など京都を舞台にした劇場版アニメーションの制作にも数多く関わっている。「多くの人から見たよ!と声をかけてもらえます。優れたアニメーションは、人と人を結びつけるコミュニケーションデザインとしての価値を持っているのかもしれません」と数井先生は笑顔を見せる。

京都×私×ミライ5年後の自分を通して見えてくるもの

社会実践力育成プログラムでは、国内ショートプログラム「京都聖地巡礼」を担当している。昨年は、京都が舞台のマンガ・アニメはもちろん、歴史、伝統文化、文学、食、ゲームなど、プログラムに参加した学生自身が自由にテーマを決め、ゆかりの場所やお気に入りの店をフィールドワークし、それらの調査結果を一冊のZINEとしてまとめた。ZINEとは作り方や楽しみ方に決まりのないオリジナルの小冊子のこと。撮ってきた写真をカタログのように並べたり、彩り豊かな手描きイラストを交えたり、街の人のインタビュー記事を織り込んだり、どんな物語を紡ぎだすのかは学生一人ひとりの個性と感性にゆだねられるという。

「ZINEの作成を通して、京都の未来と自分のつながりを知ってほしい」。教育心理学の修士号を持つ数井先生。レゴ社が開発した新しい学びのシステム「レゴ®シリアスプレイ®」を取り入れたワークショップを行っている。学生たちが街中を歩いて調べた「今」の京都と「ミライ」の京都、「今」のわたしと「ミライ」のわたし。「未来年表」などを参考にしながら、LEGOブロックを使って、5年後の自分の姿を深掘りして想像し、それを具現化した作品を作ることで、心の奥底にある内観が可視化され、他者の観察を通して新たな気づきにつながっていくという。「これからの大学生活や社会生活において、物事を相対視できる社会実践力の育成につながります」と数井先生は説明する。

今後、社会実践力育成プログラムの取り組みとして、妖怪にスポットを当てた聖地巡礼も企画していく予定で、京都在住の妖怪愛好家と協働しながら、京の怪異ツアーマップなどの作成も考えているという。京都には私たちが知らない魅力的なテーマがたくさんあふれている。「4年間を通して、楽しくてしょうがないことを見つけてほしいですね」。数井先生が生み出すアニメーションのように、これからも多様なプログラム教育でたくさんの学生に夢を与え続けてくれるに違いない。

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