SOCIAL PRACTICAL SKILL DEVELOPMENT PROGRAM

“生きている”という実感を持つ学びを

清水 貴夫(SHIMIZU Takeo)

国際文化学部 グローバルスタディーズ学科 准教授

ストリートチルドレンから垣間見るアフリカ社会の光と影

西アフリカの内陸部に位置する国、ブルキナファソ。この国の子どもたちはイスラームの教義を身に着けるため、幼少の頃からクルアーン学校と呼ばれる施設に入って寄宿生活を過ごす。このクルアーン学校は、まさに地域の中から生まれた小さな社会共同体といえるだろう。喜捨の精神に則って、子どもたちは住民などから提供された畑を耕し、町へ出て食べ物や金銭の施しを受ける。あくまで宗教の教えに基づいた行いなのだが、外部からの視点では物乞いと見なされるため、彼らはストリートチルドレンと呼ばれ、解決すべき課題としてその存在そのものが排除されようとしている。清水先生は、そんな現代のアフリカ社会の在り方について疑問を投げかける。

「ストリートチルドレンは、本当は働くことや学ぶことに意欲的なのに、何も知らない大人たちが彼らのことを理解しようとしないため、結局ストリートに戻ってしまうんです」。清水先生は、こういったことが起こる原因の一つに、欧米式の教育システムに全世界が妄信的に当てはめられようとしていることを挙げる。「もう一度、地域で育まれた文化、宗教、伝統を見直し、子どもたちにとってどんな教育が必要なのかを考えるべき」と話す。

現代アフリカの課題を扱った様々な書籍を出版

セネガルで体験する現代アフリカのダイナミズム

海外ショートプログラムでは11日間の予定で、アフリカ西海岸に位置するセネガルを訪問する。テランガ(平和)を旨とする穏やかな人びとの笑顔と西アフリカを代表するグルメを堪能しつつ、刻々と変わりゆく現代アフリカのダイナミズムについて理解を深めていく。「新たな価値観と出会える旅!」と笑みをこぼす清水先生。

途中で訪れる都市、トゥーバでは西アフリカで最も大きいモスクがある。この町では、毎年約200万人が集まる大規模な宗教祭が行われるが、周辺にはホテルもレストランもない。イスラームの精神に基づき、住人が旅人をもてなすのだという。セネガルでは、こういった宗教文化に直に触れながら、寛容の精神を学び、現地の暮らしを体感することができる。

「アフリカに対する従来のイメージと、実際に目の前に広がるリアルな風景が結びつけばいいなと思います」。“先進国”と呼ばれる国で生まれ育った私たちが、本当に恵まれた生活、豊かな暮らしとは何なのか、改めて考えるきっかけにもなりそうだ。

奉仕と支援を通して相手を導くサーバントリーダーシップを学ぶ

もう一つのプログラムでは、日本で一番古いNGO団体でもある学校法人アジア学院(栃木県那須塩原市)を訪れる。ここでは基本的には中間リーダー、つまり奉仕や支援を通して相手を導いていく「サーバントリーダーシップ」としての理念と哲学を学ぶ。毎年20名ほどのアジア、アフリカ出身の留学生たちが集い、多種多様な価値観、文化背景を持つ彼らと協働しながら、相手の考えに自分の想いを寄せ、共に一つのプロジェクトを成し遂げていくことで、自分自身を大きく成長させることができるだろう。

今回のプログラムは大自然の中で、農作物の収穫や家畜の飼育、食事づくりなどの体験を通して、アジア学院のエッセンスを体験する4日間。学院内では原則として英語が公用語となるが、「決して気負う必要はありません。言語では伝えられないコミュニケーションを見つけてほしいですね」と清水先生は優しく微笑む。

「どんな仕事をするにしても、僕たちが生きていく中で、人と人が結びつく営みというのは必要です」と説明する。今後、世の中のボーダレス化が進んで、多文化が共生する時代を迎える中、清水先生が国内外のショートプログラムで提供する社会実践教育は、きっと未来を生きる私たちの大きな力となるに違いない。

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