夏 世明(KA Seimei)
社会実践力育成プログラムコーディネーター兼担当講師
学生教育の情熱に動かされる
2023年9月まで、社会実践力育成プログラムのコーディネーターとして、連携先組織(企業、NPO、自治体など)と教員、学生との調整、プログラムの立ち上げなどに取り組んできた夏さん。京都精華大学では留学生がたくさん学んでいるが、良き先輩として彼らの相談に応じることも多い。
中国の大学では日本語を学んだ。大学3年生のとき、仲間と共に起業し、現地の大学生を対象に外国語を教える学習スクールを立ち上げた。彼らの成長を目の当たりにして、学生教育の魅力と面白さ、やりがいに気づいたという。来日して16年、京都の大学で主に経営組織論とジェンダーの視点から技術者の労務管理や人事管理について研究を行ってきたが、「自分が本当にやりたいことは教育!」と考えるようになったという。
本学が提供するプログラムでは、学生たちは様々な企業や大学、社会に出向き、多くの経験を通して一人ひとりの学びを身に着けていく。「多様性に富んだ人、空間、環境に接することで、自分は何のために大学で勉強するのか、社会にどんな価値を提供できるのか、改めて考えるきっかけにしてほしい」と夏さんは言う。
自分の価値を理解し強みを磨く
2023年度は担当講師として、国内ショートプログラム「外国人が日本で働くとは」-キャリア意識養成・職場体験-を3日間実施。留学生を中心とした4名の学生が参加した。労働市場がグローバル化する中、日本人と外国人が同じ職場で分け隔てなく働く機会はますます増えていくだろう。
「一方で、留学生の就職活動は、日本人のそれとはかなり性質が異なります」。例えば、在留資格には多くの種類があり、「教授」という資格であれば日本では教育と研究にしか従事できない。雇用する企業側のほうにも資本金や従業員数など様々な規定が定められ、それが留学生の就職・採用の壁になることもあるという。
本プログラムでは、労働法務を取り扱う事務所と連携。実際に外国人スタッフが働く商社や工場、スーパーマーケットを訪問し、経営者や外国人従業員等へのインタビューを通して、仕事のやりがいや課題、キャリア形成の現状などを共有した。「多くの人にとって外国語はコミュニケーション手段に過ぎません。自分の強みとなるスキルを一つでも二つでも磨くこと」と夏さん。企業が留学生、あるいは外国人に何を求めているのか? 例えば、金融、会計、貿易、ITなど国際的な資格を取得することで、たちまち活躍の舞台は世界へと広がるだろう、自分の強みを理解し、将来のキャリアをしっかりと思い描いて準備することが大切だという。
多文化共生の創造
11月には「外国人が日本で暮らすとは」をテーマに、国内ショートプログラムを非営利活動法人「外国人女性の会パルヨン」と一緒に実施し、出身地(日本、中国大陸、韓国、台湾、ベトナム)が多様な学生9名が履修した。就職や結婚など、様々なライフイベントを経験する中で、外国人はローカルコミュニティの一員としての生活を始める。このプロセスでは、ゴミ出し、子どもの教育、近所付き合いなど、異なる文化・習慣・ルールに順応していかなければならない。これらの日々の暮らしの仕方は、外国人だけでなく、地域コミュニティの日本人にとっても重要な知識である。「特に、多文化共生をうたう京都においては重要なテーマになってくると思いますね」と目を細める。
今年、コーディネーターとしての任期を終了し、新たなステージでスタートを切ることになった夏さん。「京都精華大学での1年半の経験をきっかけにして、これからも、女性専門職や外国人などのマイノリティが直面しがちな課題(アンコンシャス・バイアス、イジメ、差別など)についての研究、教育活動に取り組んでいきたいと思います」と決意を新たにする。