SOCIAL PRACTICAL SKILL DEVELOPMENT PROGRAM

人文社会系の産官学連携の価値を創出

南 了太(MINAMI Ryota)

国際文化学部 グローバルスタディーズ学科 准教授

南 了太(MINAMI Ryota) 国際文化学部 グローバルスタディーズ学科 准教授

“総合知”が拓くイノベーション

従来の産官学連携の取組は、技術開発や特許取得、技術移転など理系分野が中心だった。2021年、新たに「科学技術・イノベーション基本計画」が策定され、人文科学系分野の振興が盛り込まれたが、理系分野と比べて、大学や企業での専門人材は質・量ともに不足しており、共同研究数・金額も全体の約2%と圧倒的に少ないのが現状だ。

「知が源泉の社会において、人文社会系の視点で新たな価値を創造することが求められています」と南了太准教授。本学での教育・研究活動はもちろん、文科省や経産省、その他大学機関等で研究員や専門委員、各種コーディネーターを務めるなど、15年以上の間、人文社会系の産官学連携の推進に力を注いできた。

「Versatile、つまり汎用性が高く、多目的に応用できるのが、人文社会系産官学連携の強みです」と南准教授。例えば、日立製作所との連携では、経済学や心理学、人類学等多様な専門家へのインタビュー(発言)を通して、2050年の社会課題(社会のきざし)を浮き彫りにし、近未来の企業や大学の在り方、考え方を探索した。また、ダイキン工業とのプログラムでは、「空気・空調の新たな価値創出」を切り口に、大学教員や学生、ダイキン社員等が常識にとらわれず自由闊達にビジネスアイデアを出し合うワークショップや共同研究、人材交流を推進。いずれの取組も分野を横断した学際的な視点と手法で、社会の変化を機敏に読み取り、新たなイノベーションにつなげる産官学連携事例として高い評価を得ている。

人文社会系産官学連携

社会から求められる実践型教育を提供

南准教授は、本学が取り組んでいる「社会実践力育成プログラム」の立ち上げにも深く関わってきた。一般的に大学では、座学を中心とした専門教育が行われているが、実社会において学生が大学で学んだ知識をそのまま生かせる機会は極めて少ない。座学で専門分野を磨くことに加え、「他学部の学生と関わり合いながら、様々な企業、自治体、大学、NPO等と連携することで、プレ社会を体験できる実学重視の仕組みを提供したいと考えました」。学びのアウトプットは、解決型、提案型、調査型、表現型の4つ。複数の芸術系学部を有する本学の独自性を生かし、全学共通教育科目として展開することで、学生たちは自ら考え、学び、行動する姿勢を身につけていく。

京都大学と連携した「サイエンス・アート展」では、SDGs、カーボンニュートラルというキーワードで、京都大学工学研究科が取り組む空気の資源化技術を本学学生が独自の目線で理解し、ポスターや洋画、キャラクター等の芸術作品として表現。科学技術の理解や普及へとつながる、デザイン・アートによる新たなアプローチの方法を提案した。また、東急不動産とのPBLプログラムでは、東急不動産が展開する学生レジデンス(キャンパスヴィレッジ)について学生たちがアイデアを出し合い、入居者同士でヴィレッジ内留学をしたり共通通貨を使ってゲームの貸し借りをしたりするなど、入居者のコミュニケーションを促進するプランが最優秀賞に選ばれた。「企業にとっては新たなビジネスシーズの育成、学生にとっては社会に対する自信へとつながっていく。実践活動の意味はWin-Winの価値創出にあります」と南准教授は笑みをこぼす。

産学公連携PBLプログラム(東急不動産株式会社との連携)
産学公連携PBLプログラム(東急不動産株式会社との連携)

https://jissen.kyoto-seika.ac.jp/top/home/science-and-art-exhibition/

大学連携プログラム(京都大学)サイエンス・アート展

少子化時代における大学の新たな挑戦

南准教授はライフワークとして、わが国における産官学連携の歴史を紐解き、そこから時代に合った大学の在りようを追究したいと考えている。明治時代初期、東京大学工学部の前身である工部大学校では、教養や専門教育を修めた学生は、2年間の実践教育が義務付けられていたという。少子化が進む中、「大学教育の原点に立ち返って、実践活動の重要性を見直すべき」と強調する。

今、社会と大学、企業と大学の関わり方が大きく様変わりしようとしている。「例えば、自前で広報や企画部門を持たない会社が、社外パートナーとして大学、学生の知見や技術を活用できると思います」。特に、京都精華大学はデザイン、マンガ、映像、ビジュアル、国際文化など多種多様な研究ノウハウを蓄積してきた。「これからも人文社会系の産官学連携に積極的に関わり、イノベーション創出につながる成果を発信していきます」と南准教授は決意を新たにする。

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