丸岡 慎一(MARUOKA Shinichi)
マンガ学部 キャラクターデザイン学科 教授

プロセスを大切に、デザインを考える試み
絵本作家として、これまで「日産 童話と絵本のグランプリ」での大賞受賞や、「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」での入賞経験を持つ丸岡先生。絵本を通して子どもたちと関わっていくうち、いろんな悩みを小さな胸に一人で抱え、現代社会で生きづらそうにしている子どもたちが多いことに気づいたという。学校教育では一律的に解決することが難しい問題…。「絵本は子どもたちに直接的な影響を与えことができる身近なツール。アートを取り入れた教育で、私自身のメッセージや考えを伝えられないかと思いました」と笑顔を見せる。
前任校の名古屋の大学では、「子どもたちに『デザイン』を。」というコンセプトで、地域のNPO法人などと一緒に「こどもデザインだいがく」というワークショップを立ち上げた。自分だけのロゴマークを作ったり、青色の絵具だけで毛糸やコップを染めてみたり、真っ黒に塗り上げた段ボールで黒闇の世界を体験したり…、「出来栄えではなく、プロセスを楽しむことで、子どもたち一人ひとりが五感を使って、それぞれのデザインの意味や価値を考える機会を提供できたと思います」と振り返る。

想像力を開放し自分を表現する
京都精華大学のマンガ学部に所属して、「あらゆる年代の人たちに届く、マンガというメディアの可能性を強く感じました」と丸岡先生。2025年から、今までのワークショップでの経験を活かし、小学3年生~中学生までを対象に「こどもマンガ教室」の取組を始めた。原稿用紙やペン、定規などは、プロの漫画家やイラストレーターが使用する本格的な画材を用意。アシスタントとして参加するマンガ学部の学生たちと一緒に、最強の必殺技が使える魔法使いのキャラクターを作ったり、ゾートロープという道具を使ってアニメーションが動く仕組みを学んだり、上半期・下半期で1回3時間、それぞれテーマを設けて10回程度実施しているが、教室で何もしない、ただマンガを読むだけでもウエルカム。ゴールなんてない。「大学に来て、ペンを持って、会話を楽しんで帰ってもらう。今日こんなことがあったよ!と両親に話したくなる…。そんなコミュニティが生まれる場にできれば」と笑みをこぼす。
近年、小学校の国語学習において、物語創作というカリキュラムが導入されている。一方で、学校教育の現場においては、定められた国語文法を使っているか、起承転結に沿っているかなど正しい知識・技術が求められる傾向にある。「物語の辻褄や面白さなどに関係なく、想像力を自由に開放し、子どもたちが抱える内なる葛藤のようなものをダイレクトに表現できる…、それがマンガというツールの魅力だと思います」と丸岡先生は話す。

オタクの感性をはぐくむ学び
少子化の時代を迎え、大学を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。マンガはもちろん、美術や造形などを通して学生と子どもたちが交流し、お互いに学び合う風景が日常にある…。キャンパスの中に子どもたちの居場所があってもいい。「地域に開かれた京都精華大学だからこそ、果たせる役割があると思います」。
ひと昔前まで、「オタク」という言葉を聞くと、どこか閉じていて恥ずかしいと感じる人もいたかもしれない。しかし、今、特に若い人たちは、推し活に代表されるように、自分の趣味や関心、個性を表現することに抵抗はなくなっている。「表現を通して自分自身の物語を豊かに紡いでいく…。これからも、そんなオタクの感性を大切にした教育に関わっていきたいですね」。近い将来、丸岡先生の学びのもとから、大舞台で活躍するクリエイターが生まれるかもしれない。
