田村 有香(TAMURA Yuka)
国際文化学部 人文学科 社会専攻
廃棄野菜の新しい市場価値を提案
京都精華大学に赴任する以前からごみ問題に関心を持ち、ごみの組成調査や製品の環境対応に関する調査を行ってきた田村有香先生。2014年から3年間にわたって、地域農家の協力を得て、市場に出ることなく廃棄されるキュウリの調査を行ったところ、その圃場では平均して2割程度がロスとして捨てられていることが分かった。規格外の野菜は、生産者が自家消費をしたり、そのまま圃場で廃棄されたりすることが多いが「何かに有効活用できないだろうか」と考えたという。
田村先生が京都工芸繊維大学の専門家との共同研究で取り組んだのが、廃棄野菜から紙を作るプロジェクトだった。卒業生も巻き込んで紙漉き機械を手作りし、キュウリはもちろん、タマネギや九条ネギ、万願寺トウガラシなどを使った無添加の野菜ペーパーを試作。無添加なので食べることもでき、インクが乗るので書くこともでき、野菜独特の優しい色合いの紙になるので、SDGsに対応したエコ商品として、今後の市場展開のアイディアを探っている。
地域と多様にかかわる「関係人口」を創出
京都市右京区京北地域の南に位置する宇津地域は人口およそ400人、豊かな自然と歴史、文化に恵まれながら、過疎化・高齢化が進み限界集落も地域内に存在する。大学生が何か地域の役に立てることはないだろうか…。初めて宇津地域を訪問したのは今から10年前。「京北宇津宝さがし会」というサークルを立ち上げ、地域のことを学び、地域の人たちとともに行事を行い、地域の未来をともに考える活動を続けてきた。京都市と大学コンソーシアム京都による「学まちコラボ」の活動助成金を活用しながら、こどもフェスタ(川遊びや鮎つかみ等)、写真教室、クリスマス会などを定期的に開催している。Googleマップと関連づけた看板を作ったり、マスコットキャラクターをデザインしたり、イベントで子どもたちの遊び相手になったり…、「学生一人ひとりが自ら考え、スキルを生かした取り組みを行っています」と田村先生は笑みをこぼす。
これまで、地域活性化策と言えば「人口移動」、つまりそこに居住する人をどれだけ増やすかということに重点が置かれていた。しかし、実際には住まいや仕事を用意することは簡単ではない。そうではなく、「その地域のことが好きで何度も足を運んでくれて、一緒に地域を盛り上げてくれる『関係人口』を増やしたいと考えています」。他大学も巻き込みながら、週末農業やブランド野菜づくりなど、関係人口として多くの学生が地域に関わっていけるような仕組みを提供していくという。
異文化交流を通して国際力を学ぶ
2022年度の社会実践力育成プログラム(海外ショートプログラム)において、田村先生は学生と一緒にスペインを訪ねた。グラナダ、コルドバ、バルセロナなどを巡る10日間の旅。グラナダでは、現地の若者たちが参加する交流イベントで、組紐のワークショップや浴衣の着付け、折り紙教室を企画したほか、グラナダの街を舞台にした壮大な脱出ゲームを日本人、スペイン人の混合チームで楽しむなど、「異文化を肌で感じる経験ができたと思います」と話す。
参加した学生はそれぞれが設定したテーマに基づいて、現地でのフィールドワークを通して、街にあふれる様々なデザインをグラフィックで表現したり、現地の風景を何千枚の写真から厳選したアルバムを作ったり、個性がきらりと光るレポートに仕上げていく。今、国際社会とのかかわり方が深く問われるようになっているが、「その一つひとつの成果が、学生が生きていく力につながっていくはず」。まだまだたくさんの魅力にあふれるスペイン-。田村先生の飽くなき情熱が異文化への扉を押し開く。