KYOTO SEIKA UNIVERSITY

SOCIAL PRACTICAL SKILL DEVELOPMENT PROGRAM

マンガやキャラクターデザインの多様な楽しみ方を提案

小川 剛(OGAWA Tsuyoshi)

マンガ学部 マンガ学科 キャラクターデザインコース 准教授

小川 剛

作家の個性に寄り添い創作の向こう側にある物語を紐解く

「一言で説明するなら、私の仕事はマンガの学芸員」と笑みをこぼす小川剛先生。マンガは読んで楽しむもの…、そう思うかもしれないが、小川先生はマンガのみならず、イラストレーションやゲームの世界で活躍する作家の人たちが、どんな思いでキャラクターを生み出しているのか、どんなこだわりで作品を仕上げているのか、「展覧会やイベントというメディアを通して、読むだけでは意識されづらい多面的な魅力を発信したいと思っています」と説明する。

例えば、人気ゲームやアニメなど様々なキャラクターデザインを担当する寺田克也さんとコラボした展覧会では、寺田さんが描いた龍のデジタルイラストを複数枚の屏風絵にして展示する試みを行った。京都らしい和のアイテムと迫力あふれるデジタル画の組み合わせで、本の表紙やポスターのビジュアルなどとは違った新たな表現方法の枠組みを広げることができた。

また、イラストレーターの村田蓮爾さんとのイベントでは、完成した作品だけでなく、紙に鉛筆でスケッチした下絵なども同時に展示し、村田さんのイラストがどんなプロセスで出来上がっていくのか、「展覧会だからこそ観ることができるもの」にスポットを当て、多くの来場者に楽しんでもらった。

「作家さんの気持ち、ファンの気持ちに少しでも寄り添えているかを意識しています」と小川先生。幸い今、マンガやアニメ、ゲームは注目を集めるメディアとなり、これまでコラボレーションの機会が少なかった領域、業界からも声をかけてもらうことが増えてきたという。「こうした機会に楽しんでトライすることで、少しでもその魅力や可能性を示す事例になっていれば嬉しいですね」。

京都の景色を学生視点で切り取り独自の世界観で表現する社会連携プログラム

「描いて終わりではなく、描いた作品をどんな形で相手に届けるか? 本やスマホで見る以外にも、いろんな可能性があると考えています」と小川先生。社会実践力育成プログラムでは、睦月ムンク先生とともに、企業提案型の国内ショートプログラムを担当している。相鉄グループ(本社:横浜市)と連携したプログラムでは、「京都の四季」をテーマに、2022年3月にオープンしたホテル「相鉄フレッサイン 京都清水五条」のロビーに学生たちのイラストを展示する取り組みを実践した。

インバウンドや関東圏から訪れる観光客向けに、特別な京都体験を提供できないかというコンセプトで、学生たちはホテル周辺でフィールドワークを重ね、思い思いに写真を撮り、スケッチを描き、地域を取材して、イラストの構想を膨らませていったという。今、ネットなどで情報があふれているが、「京都の魅力を直接肌で感じることで、観光マップには載っていない学生ならではの切り口が見えてくるはず」と説明する。

今回、完成した作品は40点余り。有名寺院の池をクリームソーダに見立てたり、金魚と一緒に少女が泳ぐ小さな世界があったり、春夏秋冬それぞれの京都の景色を独特の視点で切り取ったイラストが揃った。学生の作品はポスターパネルとモニター展示で10月からホテルのロビーで公開され、一年間を通して観光客の目を楽しませてくれる。

夏 - 水菓子水菓子
はる

「アウトプットを見据えながら創作をしていく大切さを伝えたいですね」。実際の現場ではクライアントがいて、そのオーダーに沿った作品を提案することが多いはず。ただ自分が作りたいものを追い求めるだけではなく、相手の意向を汲み取りながら、新しいモチーフや手法を取り入れ、制作する。その試行錯誤の結果、自然とオリジナリティが作品に残っている…。社会実践力育成プログラムではそんな化学反応に期待が膨らんでいる。

今、マンガやアニメ、ゲームに対する社会的評価が大きく見直されようとしている。「京都が培ってきた歴史・文化の厚みを掛け合わせることで、これまでにない展覧会やイベント、デザインが発信できると思います」。眼鏡の奥の小川先生の眼差しはどこまでも優しい。

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