おおひなたごう(OHINATA Go)
マンガ学部 マンガ学科 新世代マンガコース 准教授
ギャグマンガのあり方と「食べること」から見えてくる多様性
ギャグマンガ家として活躍されるおおひなたごう先生。幼い頃からたくさんのマンガに囲まれて育ったおおひなた先生は、いつしかマンガを読むだけでなく、描くようになっていたのだという。「描いたものを人に見せて、その反応を見るのが好きだったので、よく親や友達に見せていました。中でもギャグマンガは見せたときのリアクションがとても良くて、たくさん描いていましたね」。
マンガ家としてデビューしたのちも、読者に笑ってもらいたい、と高いエンターテインメントの意識の中でマンガを描き続けていたおおひなた先生。そんな中、2012年から連載が開始された、「目玉焼きの黄身 いつつぶす?」という作品は、作者であるおおひなた先生自身に大きな影響を与えたのだという。「食べ方の違いをテーマに純粋なギャグを描こう、と思っていたのですが、描いているうちにもっと深いところにテーマが浮かびました。ただ違う、ということだけで一喜一憂する面白さだけではなく、どうやってその違いを受け入れていくのか、を描いてみたいと思い始めたんです」おおひなた先生は、これは京都精華大学の掲げる「多様性」の考えとリンクする、という。「人の違いを受け入れることの大切さ、というのは僕自身も意識したいところですね」。
本作品は2014年にはNHKでアニメ化、2017年にはMBS系列で実写ドラマ化された、人気作でもある。「“食”というのは、誰もが共感できる価値観で、僕のマンガを読んだことがない人でも受け入れやすいテーマであったのだと思います」とおおひなた先生は語る。また、この作品を描いてから先生自身のマンガの描き方にも変化が。長編作品に積極的に取り組んだり、食というテーマを追求したり、とギャグだけでなく、ストーリー性に深みの増したマンガが増えたのだという。「『星のさいごメシ』という作品があります。これは、食をテーマにしたマンガ第二弾で、人生の最後に何を食べるか、という誰もが一度は考えるテーマになっています。ぜひ読んでみてください」。
若い世代に教える、おおひなた流マンガ道
読みやすい作品を第一に考えている、というおおひなた先生。昔から心掛けていることではあるものの、教鞭を執るようになってから、もっと意識するようになったのだという。「大学で教えるようになってから、改めてマンガについて学ぶ機会が増えました。学生の描くネームは読みにくいものが多いのですが、それを教えるためには僕自身が読みやすいネームを描かないと説得力がないですからね」とおおひなた先生は優しく微笑む。マンガ家を目指す若い世代に対して、おおひなた先生は、若者が考えていることを理解するのが大変、と苦笑しながらも、その感性に触れることで学生から学んでいることも多いという。「学生にちゃんと漫画家として巣立ってもらうためには、僕自身がしっかりとした知識を持って教えないといけません。義務感もプレッシャーもありますが、毎日身が引き締まる思いで、良い緊張感を持って過ごせています」。
社会と関わることで養う感性の大切さ
おおひなた先生は、過去に「ギャグ漫画家大喜利バトル!!」と題し、ギャグマンガ家のみで行われた大喜利イベントを長年主催していた経験がある。そこには、おおひなた先生の考える、マンガ家にとっての横の繋がりの大切さへの想いがあった。
「社会実践力育成プログラム授業の話をお聞きした時に、ちょうど岩倉具視幽棲旧宅のスタッフの方と知り合う機会がありまして、小学生向けの歴史学習用の紙芝居を作ることになりました」。他者と関わったり貢献したりすることは、社会に出ると必ずやらなくてはいけないこと。この授業での経験が、少しでもその予行演習になれば、とおおひなた先生は願う。これは、マンガを描くうえでも常に読者を想定して描く、という意識に繋がるのだという。「視野をどんどん広げて、色々な世界を自分の作品に取り入れて欲しいですね」。授業を通して、人前で発表することの大切さや、今まで考えてこなかったことを考えるきっかけを見つけて欲しい、とおおひなた先生は期待する。