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作品と向き合い、対話を引き出す キュレーターの魅力

吉岡 恵美子(YOSHIOKA Emiko)

芸術学部 芸術研究科 教授

吉岡 恵美子(YOSHIOKA Emiko) 芸術学部 芸術研究科 教授

2014年までの13年間、吉岡先生はキュレーターとして、金沢21世紀美術館で様々な展覧会の開催に携わってきた。なかでも、現代美術家の高嶺格氏の個展「Good House,Nice Body~いい家・よい体~」(2010~2011年)では、1年近くの会期において、「暮らしの中で愚鈍になりがちな『住処』を取り戻す」プロジェクト型の展覧会を企画・運営。公募で集まった参加者が作家とともに作品制作に加わり、土のうや廃材などを使って美術館の中に自分たちが思い描くGood Houseを作っていく。寝泊りするだけでなく、土のうドームでサウナを体験したり燻製づくりを楽しんだり…、人が住む場所とは何かをからだを使って感じ、考えたいという高嶺氏の想いに共感し、実現に向けて奔走したという。

「高嶺格:Good House, Nice Body〜いい家・よい体〜」展示風景、2011年、金沢21世紀美術館
「高嶺格:Good House, Nice Body〜いい家・よい体〜」展示風景、2011年、金沢21世紀美術館

では、キュレーターとして大切にすべき視点とは何だろうか。例えば展覧会で何気なく絵画が並んでいるように見えても、目に入る順番、照明の明るさ一つに工夫があるかもしれない。オブジェを台座の上でなく、吊るしたり床置きしたりする背景には何かメッセージが込められているかもしれない。そこでは、キュレーターとアーティストの凄まじい熱量が感じられるはずだ。大学で実技のテクニックを学ぶとともに、「美術作品、あるいは作家とどのように向き合うのか。1+1が10にも20にもなるようなメッセージを人(オーディエンス)にどう伝えていくのか…。4年間の様々な実践と経験を通して、学生さんの気づきにつなげていきたいですね」と吉岡先生は笑みをこぼす。

2025年9月には、京都市京セラ美術館で開催された対話型アート鑑賞ワークショップに講師として参加した。現代美術という正解のない作品について、これまでも様々な対話を引き出すような展示企画を手がけてきた吉岡先生。今回のワークショップでは約40名の高校生がいくつかのグループに分かれ、8つのテーマから一つずつ選び、14~20世紀初頭までの美術作品を鑑賞した。例えば、絵画に描かれた登場人物の視線に注目すれば、冷ややかだったり、睨んでいたり、怒っていたり、「美術作品は無言劇だが、そこにどんなドラマが隠されているのだろうかと、想像は大きく膨らんでいくはず」。どんな音が聞こえるのか、どんな匂いを感じるのか。同じモチーフの作品でも、これまでとは違った観点で丁寧に見ていくと、専門家のレクチャーなどでは得られない、自分だけの新たな発見や気づきにつながっていく。

「京都市京セラ美術館×NIKKEI STEAM 対話型アート鑑賞ワークショップ『どこ見る?どう見る?西洋絵画!』」実施風景、2025年、画像提供:日経新聞社
「京都市京セラ美術館×NIKKEI STEAM 対話型アート鑑賞ワークショップ『どこ見る?どう見る?西洋絵画!』」実施風景、2025年、画像提供:日経新聞社
「京都市京セラ美術館×NIKKEI STEAM 対話型アート鑑賞ワークショップ『どこ見る?どう見る?西洋絵画!』」実施風景、2025年、画像提供:日経新聞社
「京都市京セラ美術館×NIKKEI STEAM 対話型アート鑑賞ワークショップ『どこ見る?どう見る?西洋絵画!』」実施風景、2025年、画像提供:日経新聞社

金沢21世紀美術館においても、金沢市内の小学4年生を対象に対話型プログラムを定期開催していたという。子どもたちはしゃがんだり寝転がったり、それぞれの鑑賞スタイルで目の前の絵画と向き合い、周りの大人たちは彼らの声に一生懸命耳を傾け、理解しようとする。「芸術の楽しさを知るということ。私たちの役割の一つはそのゲートを広げることです」と吉岡先生は話す。

新潟県十日町市で3年に一度開催される越後妻有アートトリエンナーレ「大地の芸術祭」では、芸術学部の吉野央子先生が運営する枯木又会場の展示に2015年からキュレーターとして参加している。十分な交通手段もなく、人里を遠く離れた会場までオーディエンスは大変な思いをして足を運ばなければならない。「だからこそ、今まで見たこともない景色と出会える可能性がある」。

毎回、京都精華大学出身の若いアーティストや教員の作品を中心にピックアップ。古い廃校の床や壁、天井に、マスキングテープで絵を描き、ほんの今まで子どもたちがそこで遊んでいたかのような喧騒と静寂、刹那と余韻を感じることができる作品。あるいは、体育館の中に鉛筆で黒く塗りつぶした何百枚もの新聞紙を吊るし、まるで満点の星空であるかのように見立てた作品…。「サイトスペシフィック(地域性・場所性)と作家の感性を融合させることで、新しい化学反応を起こしていきたいですね」と吉岡先生は期待を込める。

Liisa《記憶のラビリンス》、2024年、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」枯木又会場、撮影:花戸麻衣
Liisa《記憶のラビリンス》、2024年、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」枯木又会場、撮影:花戸麻衣
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