関口 正春(SEKIGUCHI Masaharu)
学長室グループ 参事

アーカイブ事業について
学長室グループとして、多くの産学連携事業に関わってきた関口さん。その中の1つにアーカイブ事業がある。そのままだと捨てられてしまう過去のマンガ、アニメーションの資料を収集整理して保管すると同時に活用する活動を、文化庁や精華町の協力を得て、精華町に位置するけいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)にて実施している。
昭和期の貴重なマンガの刊本や原稿、作品が完成してしまうと日の目を見ることのなかったアニメーションの作画資料などについて、単に収集するだけでなく、整理した上で保管し、さらに一部についてはデジタル化を行い、教材活用の検討にも取り組む。実際にアニメーションの作画資料については、小中学生向けワークショップ用の教材として利用した。
社会実践力育成プログラムにおいても、アニメーションアーカイブ事業を体験する授業を開講。4日間の集中プログラムにてアーカイブの実務を担うことで、アニメーションの歴史や技術、産業についての知見を広めることができる。マンガやアニメの制作過程の史資料にふれることで、作品の制作工程や技術、さらには制作意図を理解することにもつながるため、学生が表現者として成長する際の一助となるようにと関口さんは願っている。

里山の循環
産学公連携PBLプログラムで実施する“卒業生から学ぶ地域デザイン”では、学ぼう!里山×職人×デザイン=地域ブランディングと表し、包括協定を結んでいる鯖江市にて、本学の卒業生でインタウンデザイナーとして注目を集める先輩から、住民を元気にして地域をつくる方法を学ぶことができる。
里山からの恵みを生かす伝統産業職人の手仕事、職人とその手仕事に魅了され彼らを支える仕事をデザインした卒業生、「作り手」と作り手を支える「支え手」がタッグを組んで、自然豊かな地域を舞台に実施する独自の取組みに対して、全国から注目が集まっている。
生き生きと仕事をして、充実した生活を送っている先輩たちと対話することは、学内では得ることのできない「社会で仕事をする意味」について、考える好機になるだろう。
学生作品の発信基地
社会連携の一環として、学生作品の発信にも力を入れている。COCON KARASUMA内にあるアンテナショップ「kara-S」では、卒業生ブランドである「VOU/棒」と連携し、卒業生・在学生作家の作品を販売している。去年から開催している“Tの祭”というイベントでは、商品を作ったことがない学生も参加しやすいように、Tシャツとトートバッグという定型商品を利用して、学生のイラストをプリントした作品を販売できる企画である。作家になっていくためのインキュベーション施設としてkara-Sを意識することで、自身の作品が一般社会で売買されるという体験をkara-Sで体感してもらいたい、と関口さんは語る。
また、もう一つのインキュベーション機能として、NTTデータCCS社との連携事業「Creators-Stage」を実施している。雑貨やアクセサリー販売を中心としたkara-Sとは違い、こちらはアート作品そのものを通販することが可能な、一般向けプラットフォームだ。本名や連絡先を公開せずに金銭の授受は企業が代行する、大学が在学生へ推奨する、通販機能を備えた作品発表サイトである。
「これらの取り組みが、表現者になるための最初の一歩を踏み付だす手助けになれば」と、関口さんは微笑む。目指すは京都精華大学型の起業家育成環境の整備。学生たちの成長に期待が高まる。

京都精華大学と冒険する
社会の課題解決を社会人と一緒に取り組んだ「社会連携」を経験した学生は、経験前とは大きく変わることが多い。その「社会連携」取組みの重要なキーワードは、「冒険」ではないかと関口さんは語る。学生自身のやる気や主体性は、取組みの中にちりばめられた「冒険」の要素に左右される。「冒険」の要素をちりばめるためには、教職員も一緒に(知的な)冒険する必要があるだろう。「大学にピュアな気持ちを持って入学した学生を4年間でいかに大きく変容させてあげることができるか。学外の方々の力をお借りして、学生に冒険の機会を提供することが社会連携の大きな目的です。学生と一緒に冒険させてもらうことで、私自身あらたな発見が連続する日々です」と、関口さんは笑う。
学内の要望にもとづく社会連携の提案、地域社会における大学の存在意義の確立など、今後の展望は数えきれない。京都精華大学はこれからも冒険し、成長していく。
