SOCIAL PRACTICAL SKILL DEVELOPMENT PROGRAM

デザインの本質を学ぶ!

米本 昌史(YONEMOTO Masashi)
デザイン学部 プロダクトデザイン学科 ライフクリエイションコース 教授

人との関係性を豊かにし空間を非日常に変えるプロダクト

カーテンの色一つで部屋の雰囲気が変わるように、「プロダクトはそこに単体で存在しているわけではありません。周りとのかかわりを含めたものづくりを考えることが大切です」と米本昌史教授。Tokyo Designers Week Professional展やLIVING&DESIGN展などに自身のプロダクト作品を数多く出展している。

例えば、京都の精密加工会社とのコラボでは、ペンダント照明のシェードに微細な孔を開け、世界地図や様々な模様をドットデザインした新感覚のあかり「Chackshade」を作った。京都で育まれた技術とデザインを掛け合わせたプロダクトで、「こぼれ出る光の造形を楽しみながら、この国はこんなところにあるのかと、家族で会話が弾むきっかけになれば」と笑みをこぼす。

そのほか、テレビを生きもの、宇宙人のように見立てて作った「TV-leg」、座るだけでなく、中に入ったり着て楽しんだり、子どもたちが想像を膨らませて自由に遊べる椅子「suit」など、米本教授が生み出す作品は暮らしの中で人との関係性を豊かにし、空間を非日常に変えていくユニークなものばかりだ。「プロダクトデザインの本質は、そこにあると思っています」と話す。

Chackshade
TV-leg
TV-leg
suit
suit

ユニークな人や地域とのかかわりから生まれるライフクリエイション

米本教授は数年前から、西陣地域との社会連携にも深く関わっている。西陣織という伝統産業とともに発展してきた地域の独自性、そこで暮らす個性豊かな人たちに魅了されたのがきっかけだったという。

現在、研究室を卒業したOBの手などを借りながら、年に1回、フリーペーパー「Nishijing?」を作成し、取材を通して掘り起こした西陣の魅力を広く発信している。「いきなりプロダクトを作るのではなく、人や地域の中から生まれてきた価値を新たなデザインにつなげていこうと考えています」。西陣に受け継がれる伝統技術や素材をベースに、新たなプロダクト(土産品)試作にチャレンジする「NISHIJIN LAB」を立ち上げ、干菓子づくりで使われる木型で愛らしいマグネットを開発したほか、西陣織の伝統的な金襴の色柄をリ・デザインしたお洒落なサコッシュや新社会人向けのプロダクトツール、名刺入れやネクタイなどを作った。現在はまだ提案の段階だが、展示会などでは来場者からの評価は上々で、商品化も視野に入れて取り組んでいくという。

今後は、社会実践力育成プログラムの連携先でもある東急不動産株式会社が展開する「CAMPUS VILLAGE」と協業し、例えばフリーペーパーの取材で知り合ったヒト、モノ、コトなど、ご近所さんのイラストをマップに見立ててカフェの壁に描いたり、「学生と西陣地域の結びつきを深めるきっかけになればと思います」と期待を込める。

市場のニーズを満たす実践的なものづくりを社会連携で学び取る

スプーン一つをデザインする場合でも、子どもが使うのなら柄の部分が短いほうが扱いやすいし、アイスクリームを食べるのならすくう部分が平たいほうがいいだろう。誰が何のためにそのプロダクトを使うのか?「デザインは常に関係性で成り立っています」と米本教授。ややもすると、大学でのものづくりは自分が作りたいものが簡単に作れてしまう環境にあるが、実社会では何でも思い通りにというわけにはいかない。コストや使いやすさ、耐久性、消費者ニーズ、市場のトレンド…、それらのニーズを満たすようなものづくり、例えば照明ならスイッチがどこにあってどこを押せば点灯するのか、すべての人が分かる共通のデザインが必要となる。

今、一からじっくりと学生を育てる余力のある中小企業はそれほど多くない。大学での社会連携を通して実践的なものづくり、デザインづくりを経験し、様々な制約がある中で自分の思いを表現するにはどうすればいいかを考える機会を持つことは、社会に出たときに大きな力となるはずだ。「デザインの本質について、皆さんと一緒に学べることを楽しみにしています」。学生たちを見守る米本教授の眼差しはどこまでも温かい。

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