KYOTO SEIKA UNIVERSITY

SOCIAL PRACTICAL SKILL DEVELOPMENT PROGRAM

若者たちの持つ力

ナン ミャ ケー カイン (NANG MYA KAY KHAING)

国際文化学部 グローバルスタディーズ学科 共通教員

ナン ミャ ケー カイン (NANG MYA KAY KHAING)
国際文化学部 グローバルスタディーズ学科 共通教員

在日ミャンマー人コミュニティ

ミャンマー出身のカイン先生は、大学院で開発経済学を学び、ミャンマー国内の労働移動を研究し、現在は2021年に起こったミャンマーでの軍事クーデターをきっかけに、日本国内のミャンマー人コミュニティの現状について調査している。

ミャンマー人コミュニティは複雑に構成されており、日本と似て村意識が強いのだと、カイン先生は説明する。注目すべきは、クーデター以降の民衆派の活動の中心は主にZ世代であるということ。2015年の総選挙で、アウン・サン・スー・チーさん率いる政党、国民民主連盟が勝利した。その結果、大学卒業後の人生選択が自由になり、留学ではなく、安定した生活が望める技術・人文知識・国際業務(通称「技人国」)を中心に日本に働きに出る人が増加。そんな中起こった、2021年軍事クーデター。憧れの国日本に行く道を突然断たれ、将来の夢や希望を抱くことも許されず、身近な人が亡くなっていく。そんな現状の中で自らの将来と今後のミャンマーについて真剣に考えた若者たちが立ち上がり、活動しているのだ。

日本でのミャンマー人コミュニティにおける民主化活動について、就労が確保できているため自身の生活に困ることがなく、平日の夜や土日に活動に参加することができるのだという。また、今では日本全国どこにいてもオンラインミーティングが可能な上、ミャンマー国内の情報をネットから知ることもでき、また、その情報を日本に拡散することもできる。軍の妨害により困難を極める、国内の避難民への支援についても、日本での街頭募金活動やクーデター以降に制作された映画の興行収入、チャリティグッズの売上金をミャンマー国内や国境付近のNGO団体を経由し支援している。

ミャンマーのクーデターと私たち

「自分たちの思っていることを自由に話せる、ということが一番身近な民主化」だと、カイン先生は語る。人口の7割が農村に暮らすミャンマーでは、長きにわたり軍政が続き、政府に作物の献上(供出制度)も存在し、かなり歪んだ経済構造が続いていた。2016年以降は民主化の方向へ進展していると実感してきた最中起こったクーデター。民主派を支援する村が多い中で、軍は武器を持たない村人に対して、弾圧として村を放火、更には空爆を行う。非人道的な方法で行われる弾圧には、日本で活動するZ世代のミャンマー人の家族も巻き込まれている。

そんな中、ミャンマーでは現在、海外に出たい人が殺到している。ただ、2021年以前のように気軽にパスポートを取ることは難しい。公務員や国立病院に勤務する医師や看護師、国立大学に勤める教師などがクーデターによる軍事政権への協力を拒み、仕事をボイコットした、市民的不服従運動(Civil Disobedience Movement=CDM)に参加した人は、今も軍から逃げ続け、国外に出ることもままならない。民主化を支援している地域の出身だからという理由でパスポートを発行してもらえないこともある。

政治と聞くと、日本では少し抵抗を感じる人が多い。だからこそ、関心を持ち、どうなっているのかを監視する必要がある、とカイン先生は語る。「どっちの味方をする、とかではなく、自身で物事を考えられるように知識・関心を持ち、情報を集めることが大切です」。ミャンマーで起きている戦争は国内問題のため、ASEANや国連が介入しにくいとされている。しかし、内戦や戦争が起こっている国の国民の命と、他の国の命に優劣などなく、どちらも尊い命である。世界各地で起こっている、武器を持たない一般人が命を脅かされる状況は世界共通の課題であり、日本社会も他人事ではない。

タイでの交流プログラム

カイン先生は、社会実践力育成プログラムにて、タイでの海外ショートプログラムを担当されている。バンコク北部に位置するランシット大学を訪れ、学生たちとワークショップを行った。授業には6名が参加し、日本語学科で日本語を学ぶ学生との交流を楽しんだ。

地図に載っていないバンコクを旅する、というテーマで、現地の学生に様々なところに連れて行ってもらい、最終日にその成果を発表した。「タイではナイトマーケットなど、マーケットが有名で、あるグループは別の大学に行って、大学構内のマーケットを楽しんだそうです。そこでは、学生さんが作ったものを商品として売っていて、ランシット大生もよく遊びに行くのだそうで」。京都精華大学にもこういった場所があればいいね、と盛り上がったのだとか。

個人で旅行に行くのとは違い、現地の学生と直接触れ合い、そこからSNS等を通じて国境を超えた良い友人関係がスタートする。この授業に参加する意義はそこにある、とカイン先生は微笑む。

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