2026年 2Q 集中(7月〜9月)に実施した「大学連携プログラム(京都大学)」(科目代表者:南了太)は、京都大学と連携を図り、最先端の技術に対してアート・デザイン・文系視点でアイディアを提案・表現する授業です。
現在、2030年までにSDGs の達成が求められています。その中でも環境問題の対応は喫緊の課題です。4年目となる本プログラムでは、これまでと同様に京都大学大学院工学研究科の沼田圭司研究室と連携を図り、二酸化炭素の削減や空気の資源化に関するワークショップを通じて、SDGsの目標達成に寄与できる提案を行うことを目標としました。
具体的には、座学と実践(フィールドワーク・制作)を組み合わせて、最先端の科学技術の課題やニーズをきちんと把握、整理し、解決するためのアイディアを提案し、さらに大学での学びを実社会の現場に応用することでキャリア意識の向上のみならず、普段接点のない理系分野との連携も目指しました。特に「アート・アクティビズム」(アートを使って社会問題や環境問題の解決のために働きかける活動・キャンペーン)の視点を導入し、プログラムを実施しました。さらに今年度は京都産業大学の寺地徹副学長のご協力のもと、DNAが沈殿する様子を実験する機会もあり、従来よりも発展した実践プログラムを実現しました。

受講者は5名(4年2名、3年1名、2年2名)で、日本画、イメージ表現、プロダクトデザインなどを専攻とする学部学年を越えた様々な学生の参加がありました。
先ず、インプットの段階では、児玉廉先生(issue design)から脱炭素のワークショップを通じてゼロカーボン社会の実現に向けての見識を得ました。
続いて、京都大学桂キャンパスを訪問し、沼田圭司先生(京都大学)から研究紹介をはじめ、小田原真樹先生(京都大学)や福留明日香先生(京都大学)から実験施設の紹介を受け、どのように理工・生物系分野の研究が進められているかの説明を受けました。


また、寺地徹先生(京都産業大学)からは、講義の後、実際に実験器具を用いてDNAの沈殿の様子を観察しました。さらに、白井哲哉先生(京都大学)からELSI(ethical, legal and social issues)や研究広報について学び、1か月間普段接点のない理工・生物系分野の知識を学ぶ機会を得ました。

アウトプット段階では、自身が得た科学技術の知見をもとに様々な表現をしました。
「空気を食べるロボット― 空気から生まれる素材と循環を考える」(吉田蒼)

「ツナグクモイトーTUNAGUKUMOITOー」(谷口紗南)

「人工クモ糸から考える、ディスポーザブル・メイクツール」(近藤有寿)

受講生からは、
・他学部の人と学年関係なくアドバイスし合える関係が良かった。普段とは違う視点からの意見が聞けて、考えの幅が広がった。京大の研究室を見学したり、京産大で実際に化学実験をしたり、プレゼンの練習で京大の先生の意見を貰ったり、普段できない経験を沢山させてもらったことで、理系分野と、アート、デザイン思考の関わりの重要性を知った 研究内容を伝えるだけではなく、一般の人に伝わるようにするには、その技術に触れた人に、どのような体験をしてもらい、どのような考えを持ってもらうかが重要であり、それのことはアートやデザインによってより伝わりやすくすることが可能だということを学んだ。これ程、制作の途中段階で沢山意見を貰える授業は今までになかったので、今まで以上に制作も進めやすく、沢山のことを吸収できた。プロダクトデザインを学ぶ中で、これまでは使いやすい形や製造のしやすさ、造形の美しさなどを考えて課題に取り組んできた。しかし、製品が使われた後の循環までを考えたデザインをしたことが無かった。そこで今回の授業を通して、素材の選択、製造工程、使用後の循環までをデザインの一部として考えることの重要性を学んだ。これからはその循環を踏まえたデザインを自分の制作に取り入れていきたいと考えた。
・まず、普段の学生生活では得ることのできない体験ができたことが大きな収穫だった。様々な立場の方々のお話を伺う機会は滅多になく、多角的な視点から物事を考えるきっかけになった。中でも特に印象に残っているのは、京都大学を訪問した際の経験である。世界の未知の領域に挑戦し続ける姿勢に触れ、深く感銘を受けるとともに、自分自身の視野の狭さを思い知らされた。一方で、この講義を通して痛感したのは、自分自身、そして自分の周囲の人々が、環境問題に対していかに無関心であったかということである。「無知は罪」という言葉があるように、知らないままでいることの怖さを、今回強く実感させられた。同時に、環境問題に限らず、自分の全般的な知識の不足も痛感する結果となった。この経験を踏まえ、今後は環境問題への関心を持ち続けることはもちろん、一つの分野に偏ることなく、幅広い物事にアンテナを張り、積極的に情報を収集していく姿勢を大切にしていきたいと考えている。
・普段、自分の専門分野だけでは聞くことのできない話を直接聞くことができるため、研究内容だけでなく、それぞれの分野でどのようなことを考え、どのように研究を進めているのかを知ることができます。そうした話を聞く中で、自分の専門とは一見関係がないように思える内容でも、実際に話を聞いたり研究を体験したりすることで、思いがけないところから制作のヒントが見つかることもあると思います。実際に研究されている方から直接話を聞くことで、資料やインターネットで調べるだけでは分からない考え方や、研究の背景まで知ることができます。自分の専門分野だけで考えていると気づけなかったことを、異なる分野との交流を通して発見できることが、この授業の大きな魅力だと感じました。自分のアイデアを実現するために研究を利用するのではなく、まず相手の研究を知り、そこから何ができるのかを考えていくことで、普段とは違った制作の進め方を経験できると思います。制作の幅を広げるだけでなく、物事をどのような視点から捉えるのかという、自分自身の考え方を広げるきっかけにもなる授業だと思います。
本学は「表現で世界を変える大学」をうたっています。今後も京都大学と京都精華大学、さらに京都市内の大学が連携し「アート・アクティビズム」の観点から科学技術に対して、様々な表現をしていきたいと思います。(文責:南了太)
参考:サイエンス・アート展 | 社会実践力育成プログラム | 京都精華大学